温泉手帖♨︎

温泉ソムリエの温泉備忘録

伊香保温泉 千明仁泉亭(群馬)

上毛三山の一つ 榛名山の中腹に位置する伊香保温泉。万葉の時代から続く歴史と伝統あふれる関東屈指の温泉地。お湯の発見は1900年前とも1300年前とも言われている。

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有名な365段の石段。戦国時代に湯を効率的に宿に配分するため計画的に街並みや石段を整備したそう。

石段を登り終えたところに伊香保神社がある。

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上越新幹線高崎駅から上越線で25分の渋川駅が最寄り駅。駅からはバスやタクシーで30分ほど。

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この石段の上に湯元があり、源泉が石段の下を勢い良く流れている。

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源泉井戸から落差を利用し、栗の木の樋を通って各旅館に配湯されていて、石段の所々で流れる源泉を見ることができる。

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伊香保温泉では「小間口権利者組合」に入っている宿を選びたい。

小間口権利者とは源泉所有者のことで、各々定められた量の源泉を所有する者。現在、旅館では9軒の所有者が、厳しい適正使用を定め組合を形成している。

伊香保温泉には50軒前後の温泉旅館があるけど「黄金の湯」を使用しているのは約半分。9軒の権利者からさらに分湯されている。

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その9軒の旅館の中でも、宿泊客一人当たりの源泉量が一番多いと言われているのが千明仁泉亭(ちぎらじんせんてい)で、どこの旅館にも分湯していない。豊富な湯量の伊香保源泉「黄金の湯」が100%かけ流しで味わえる。

創業500年を超える、室町時代の1502年より続く伝統の湯宿 千明仁泉亭は、石段街の中ほどに位置する。

明治の文豪 徳冨蘆花ゆかりの宿で、代表作「不如帰」はこの宿が舞台。亡くなったのもここ。

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室町時代連歌師 宗祇が療養のためにこの宿を訪れ、源泉を「めぐみの湯」と呼んだことから、「めぐみの湯」を「仁乃湯」と書き、宿名「仁泉亭」の由来ともなった。

豊富な湯量を誇る仁泉亭には、いくつもお風呂があり、制覇しまとめるのも一苦労だったほど。

まず、貸切家族風呂が4つあり、一晩中いつでも入ることができる。予約や時間など何もなく、空いていれば中から鍵をかけて入る方式。

中2階と中3階に二つずつあり、部屋から大浴場や露天風呂に行くよりずっと近く、気軽に行ける。

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中2階にあるのは『憩』と『泉』。脱衣所も浴室も『憩』の方が大きいけど、湯船はほとんど変わらない。

大きい方の『憩』。

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もっのすごい勢いでかけ流されている。ひとりで入るとゆったり広々で、かなり快適。

鉄分を含む黄金の湯は茶褐色。pH値は6.4の中性で刺激が少なく肌に優しい。じっとりとした浴感。

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夕食後の夜の時間で湯温42.5度と、他の湯船に比べて熱めだった。

この向かいにあるのが『泉』。f:id:ayumu27:20190323221131j:image

湯口から溢れ出るように滔々と投入されるお湯。
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鉄の匂いがし、ほんのり鉄味。しょっぱさはほとんどない。茶色の小さな湯の花。
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当然鉄分を含んでいるから、貧血、冷え性などに効く。

夕方で、湯温は42度弱。

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湯口の場所が長い辺にあるか短い辺にあるかの違いのような気もするのだけど、『憩』より小さく感じる。
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貸切風呂も大浴場も、毎日完全換水清掃をしていて、消毒剤は使用されていない。もちろん循環もなし。源泉温度が41.2度のため、寒い季節だけ加温している。

中3階にある貸切風呂が『仁』(めぐみと読む)と『精』(こころ)。

『仁』は先の2つと同じような湯船。

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絶妙な深さで、体育座りだと少し肩が出るけど、縁に体を預けると、すっぽり肩がお湯に浸かり、顎の下すれすれの心地よい湯の深さ。
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湯温は、夕方で41.5度。3月とは信じられないくらいの寒さの中、石段を歩いてきたので、身体がなかなか暖まらない。
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ちょうど夕暮れ。貸切風呂は窓を開けてベランダに出られるようになっている。息が白い。寒い。

濃い塩化物泉のようなねっとり感ではないけれど、肌にじっとり軽くねっとりの湯感触。塩化物泉でもあるので保温効果も高い。

4つ目は向かいにある『精』。ここだけめっちゃ広い。

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これくらいの広さの大浴場の宿、普通にある。
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木の造りがいい感じ。
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寝湯できるように、枕木まである。

部屋の近くにあるこれらの貸切風呂でもう十分。4つもあるから全部使用中なんてないし、いくつか空いていて選べる場合がほとんど。

でも、ここの名物の立ち湯に入っておかないと。

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大浴場は深夜1時に男女入替で、一晩中入れる。一階の玄関脇にある『仁(めぐみ)の湯』と『滝湯』。

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『仁の湯』が立ち湯。手前の長い辺と奥の短い辺の二辺に段があり、その一段の先はがくんと一気に深くなる。

急に深くなるから気をつけるようにと宿の人にも注意され、注意深く入るのだけど、入るたび毎回想定以上の深さに、がくんばしゃばしゃとなり、ひやっとする。

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深さ1m。立って胸のちょっと下くらいの深さ。段に腰掛けるとちょうど胸あたり。段に腰骨を付けて寄りかかり、空気椅子状態で肩まで湯に浸かる。

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勢いよくかけ流されていて気持ちいい。しかも、早朝の湯温40.5度。超適温。歩行浴してる人もいた。

これだけ広くて清潔で快適な大浴場が一晩中入れるのだから、貸切風呂が混まずに使えるのもうなづける。

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『滝湯』は普通の大浴場。

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ここも木の床がいい感じ。大浴場も貸切風呂同様、がんがんかけ流し。

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夕食前の夕方の時間帯で41.5度から42度弱。他の湯船に比べると少し熱め。
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奥に湯滝があり、轟音が響き渡ってる。湯けむりがもわもわ。
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大浴場にはフェイスタオルの備え付けがあり、便利。何回でもお風呂行こうって気になる。タオルはもちろん体を拭くと黄金色になる。

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露天風呂は別棟にある。

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内湯もサウナも付いてる申し分ない浴場なのに、外履きに履き替えて歩いて行くのがめんどくさい。

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こじんまりしてるけど、清潔で心地よい浴室。シャワーは4つ。
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小さめの内湯とサウナ。
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湯船があまりにも多くて、とりあえず全制覇しようとしてたら時間がなくて、サウナは覗くだけ。
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この内湯、秘湯の宿の内湯みたいな鄙び感がある。
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41.5度ちょいくらいの湯温。肌にじっとりと馴染み、何度も入るうちにつるつるきゅっきゅっとした浴感になってきた。

二番目に多い溶存物質が炭酸水素イオンで重曹泉にあたるので、皮脂や古い角質を石けんのように洗い流してくれる美肌効果がある。

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この湯船が一番湯の花が多かった。細かい茶色の湯の花。
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他の湯船と違い、洗い場にかけ流しではなく、排出口から湯が出されてる。
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ゆったり析出物見て喜ぶような心持ちになる湯船。まさに秘湯感。

外履きでの別棟じゃなければ、この浴場がすごくいいのに。あ、しかも夜は22時までで、朝は6時から。結局、一晩中入れる貸切風呂や大浴場に行くことになる。

露天風呂は広い。

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湯口のそばが41度くらいで、離れると40度くらい。かなりぬるめで長湯できる。

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他にも湯口があったのかもしれないけど、どんどん暗くなるし風がめっちゃ冷たいので探索を断念。
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泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉。様々な溶存物質を含む豊富な効能があるお湯。

一番多く含まれている溶存物質はカルシウムイオンと硫酸塩イオンで、石膏泉。肌の弾力を回復し角質層の形成を促進させる効果がある美肌の湯。

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また、天然の保湿成分メタケイ酸も多く含まれ、湯上がりの肌はさらすべ。

こんなに近くにある誰でも知ってる伊香保温泉。過去の記憶や想像をはるかに上回るいいお湯だった。

 

伊香保温泉 千明仁泉亭

★★★★★

カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉

41.2度

pH 6.4

400ℓ/4627ℓ/分

大浴場(内湯)男女入替2  露天風呂(内湯とサウナ付)2  貸切4

加水循環消毒なし 冬季のみ加温あり

2019.3.23宿泊