1200年の歴史がある塩原温泉郷。古くから塩原十一湯と呼ばれていて、東から西へ、大網、福渡、塩釜、塩の湯、畑下、門前、古町、中塩原、上塩原、新湯、元湯という湯本が点在。渓流沿いに60軒ほどの温泉宿があり、源泉数は150ヶ所以上。多様な泉質や成分の温泉が湧いている。
この温泉郷の一番奥にあるのが元湯。昔は元湯千軒といわれるほど栄えていたという、塩原最古の湯。
塩原温泉バスターミナルから送迎の車で約20分。今は、静かな山あいに3軒の旅館がひっそりと残っているだけ。宿の下を赤川の清流が流れ、辺りはナラやクヌギの原生林が生い繁ってる。
大出館は秘湯を守る会。古くから胃腸によく効く名湯といわれ、長期の湯治客も多い。泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉。2本の源泉を持ち、湯船は8つ。
大出館といえば『墨の湯』。日本にひとつしかないと言われる鉄分たっぷりの黒いお湯。
普通、鉄分の多い温泉は赤茶色がほとんどなので、確かにめずらしい。黒というか濃い藍色。
湯口が硯のよう。
細かい濃い灰色の湯の花がたくさんで、黒い湯に見える。
匂いはそんなにきつくなく、鉄っぽさもない。
タオルが真っ黒になるみたいだけど、湯船に浸かっている縄も真っ黒。
しっとりした湯感触で、湯上がりの肌もしっとりが続く。肌のセラミドを整えコーティングするメタケイ素がたっぷり入ってる。
湯温は36.5度前後でかなりのぬる湯。底の方はさらにぬるい。
回らない換気扇のある換気口から雪が舞い入ってきて、内湯だけど浴室の気温は低い。
湯口の近くの湯面でやっと37度。この時期、あと1度高ければいいのにと思ったけど、それでも1時間じっくり浸かる。
ゆっくり眺めていると、壁の侵食が半端ない。温泉の成分があまりに強いので、ほとんどの金属はすぐに腐食してしまうそう。客室の電化製品の寿命も長くて1年とのこと。
湯の排出口。鉄板みたい。
墨の湯の源泉は五色の湯No.3。含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(硫化水素型)。それほど硫黄臭はしない。
もう1本の源泉 御所の湯と泉質名は同じだけど、墨の湯の方は鉄イオンとアルミニウムイオンを含んでる。飲泉すると胃腸だけでなく、貧血や婦人病などにも効く。消毒効果のあるメタホウ素もたくさん含まれてる。
墨の湯には湯船が2つ。左側にあるのは鹿の湯。
左:鹿の湯、右:墨の湯
墨の湯から見た浴室。カランは二ヶ所。温かい湯と水を混ぜて使う。ボディーソープだけ備え付け。シャンプーは売店で買える。
鹿の湯は、深緑の濁り湯。
こちらの侵食もすごい。白い析出物もある。
石油臭があり、苦くて飲めない。
白い湯の花が少し舞ってた。43度前後で熱い。こちらに先に入ると、墨の湯がさらに冷たく感じるので、最後の上がり湯に。
墨の湯は混浴だけど、14時から15時と、19時から20時半が女性専用時間。この時間にしっかり堪能する。
墨の湯の隣が女性専用の浴場。
女性専用の浴場には内湯と露天風呂がある。内湯は高尾の湯、露天風呂は子宝の湯。
源泉は御所の湯で『五色の湯』と呼んでいる。天候や季節により色が変化するお湯。晴れるとエメラルドグリーンや乳白色、雨が降ると灰色に変化するらしいけど、大雪の今日は‥。
まずは内湯。緑がかった灰色の濁り湯。
右の壁が墨の湯との境。墨の湯とは全く違う明るい浴室。40度くらいの絶妙な湯温でゆっくり入れる。朝は41〜42度だった。
硫黄らしい白く柔らかな湯の花が湯底の端の方に溜まってる。
湯船の縁は白く析出でコーティング。つるつるで痛くはない。
胃腸に効くお湯。少し苦いけど香ばしさもある。
やっぱり壁の侵食激しい。
回らないぼろぼろの換気扇がある換気口。
洗い場は3つ。もちろんシャワーないので、這いつくばってカランの下に頭突っ込んで洗った。
子宝の湯という女性用露天風呂。なんと露天風呂が黄緑色の濁り湯だった!HP見ても灰色っぽくて、こんな黄緑色だと思わなくて感動。
こんなに黄緑色な湯色初めて見た。
半分に屋根があるけど、風で雪が舞ってるので、顔は雪を浴びながら。
露天も内湯と同じ40度前後の湯温。
なめらかでつるりとした湯感触。とろみのある湯が暖かく感じるので、露天風呂も寒くない。
雪を眺めながら。
湯が掛け流されていくところに、黄緑がかった白い湯の花が溜まってる。もちろん湯船の底にも。
五色の湯の源泉は、浴槽ごとに浴用、飲用に特効があるとされてる。
この露天風呂は婦人病に効くと。だから子宝の湯。
もう一つの露天風呂、混浴の岩の湯は神経痛に効くそう。
こちらは湯温が熱かったらしい。
混浴の内湯は2つで、手前が糖尿病に効くという平家かくれの湯。
右の大きい方の湯船が御所の湯。胃腸に効くとされている。ぬる湯で長く入れるお湯だったそう。
もう一つ、貸切の湯船がある。
扉の札が『空いてます』だと、裏返しの『入浴中』にし中から鍵をかけて入れる。ここも24時間入れる。
どの湯船も夜中じゅう好きな時に入れる。それぞれの湯船の湯温や色に違いがあり、好みの湯に入れる。なんて贅沢な。
部屋が一階の大浴場の階だったので、気軽にお風呂に行けた。ドアを開けると硫黄の香りがぐわっとする。帰りのバスでは、自分から匂う硫黄にどっぷり。
塩原温泉 大出館
★★★★★
含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
50.3度(墨)、51.1度(五色)
pH 6.2、6.6
3.2ℓ/分、110.6ℓ
内湯6 露天風呂2
加水加温循環消毒なし
2018.12.29宿泊